山田写真館春秋

山口県美祢市美東町の歴史を四代に亘って見てきた写真館の店主による徒然草

管理人の書庫 『夏への扉』

久しぶりに管理人が読んだ本の感想を書こうかと思います。

その本は
『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン/ハヤカワ文庫SF)です。

ハヤカワ文庫SF、とあるだけあってこの作品はSFというカテゴリに入ると思われます。

ただ、宇宙で戦争をしたり、ケイ素生物が出たりするようなハードな内容ではなく、
時間的なトリックを用いたタイムトラベル物です。

技術者である主人公は友人と会社を興し、
革新的な商品を生み出すのですが、
友人にだまされ、地位と財産と一匹の猫を失うのでした。

冬でも「夏への扉」を探して止まない一匹の猫を。

要するにこの話はそこから主人公がどうやって起死回生し、
遂に愛する人と、一匹の猫を取り戻したのかという物語なのです。

『夏への扉』はおそらくSFとしては破格に多数の読者を獲得した作品で、
日本では特に知られているらしいです。

確かに、同じ著者の代表作『月は無慈悲な夜の女王』などと比べると
SFとしては読みやすく、また非情に叙情的に書き上げているという印象があります。

そしてSFとしてはきわめて異例なくらいさわやかな読後感が特徴でしょうか。

実は最近『恋は雨上がりのように』という久しぶりに心に突き刺さる漫画を読み、
その時、ふと頭に浮かんだのがこの『夏への扉』でした。

両者の共通点といえば、
中年の男性と年若く一途な女性の恋の話というところでしょうか。

この二つの作品の主たる登場人物である中年男性には共通点があって、

年齢は40くらい
そこそこの地位
お人よし
結構人生の辛酸をなめている
自分の人生に対してもはや多くの夢や希望を抱いていない

と、ここまで書いてみると、
おや、これは世の中年男性のかなりの部分に当てはまる事だな、と気づきます。

両者とも若年の女性からの好意を簡単に受け止められるほどおめでたくはありません。
そりゃそうだ。

管理人も含めて、
世のおっさんは世の中に虐げられすぎて
すっかり牙を抜かれちゃって自分の感情なんか押し殺してて
なんともつまらない人間になるものです。

夢や希望を失わずに生きろとか
そういう説教くさい話ではなく、
なにかをしてもいいっていう自己肯定くらいはしてもいいんじゃないかという、
そして、もちょっと行動を起こしてもいいんじゃないかっていう、
啓発? みたいな風に理解しても良いかなと思うんです。

もちろん『夏への扉』にも『恋は雨上がりのように』にも
著者はそんな主張はミジンコほども込めていないでしょう。

というか、管理人は作品に説教が込められているものなんぞはゴメンこうむりたい派です。

しかし、作品からなんらかの抽象観念を感覚するのは大事だと思うのです。

読者が作品から読み取る物語は十人十色であってかまわないし
そうであるべきだと考えます。

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